基礎知識

最終更新日:2024.02.08

「再開発」とは?住宅や店舗の立ち退きに関わる「第一種市街地再開発」を詳しく解説

全国各地で行われる大規模な工事や建設には、多くの場合「○○地区再開発」といった名称がつけられています。

「再開発」とはいったいどのような事業で、何を目的として行うのでしょうか?

この記事では、再開発の種類や、その中でも再開発対象地域に住む人や店舗・物件オーナーにもっとも関わりの深い「第一種市街地再開発」について、知っておきたい基礎知識を分かりやすく解説します。

再開発にはいくつかの種類がある

「再開発」とは、読んで字のとおり、過去に住宅や商業施設など建物がつくられた地区を新しく開発(作り直し)して、より効率的で安全快適な土地へ改善し価値を高めることをいいます。

もっとも多いのはやはり人口や建物の多い都市部での再開発ですが、それ以外にリゾート地や工業団地・農業地なども老朽化にともない再開発が行われます。

都市部の再開発の種類と規模

都市部での再開発は、市街地の過密状態や公共施設不足といった問題を解決するために、今ある市街地を計画的に作り変えて、都市空間や機能・環境をより良くする目的で行われます。

民間企業が自社ビルを建て替えるような小規模な任意の再開発から、都道府県などの公共団体が主体となって区域一帯の土地を統合し、収益性の高い高層ビルなどに建て替える大規模な再開発まで、その規模はさまざまです。

また適用される法律も事業によって異なり、都市再開発法に基づく「市街地再開発事業」のほか、都市計画法に基づく「防災街区整備事業」、土地区画整理法に基づく「土地区画整理事業」などがあります。

また「優良建築物等整備事業」「マンション建替事業」などの小規模な事業では都市計画決定などの法律手続きを要しないため、スピーディに進む傾向があります。

都市再開発の2つの手法

都市再開発には、大きく分けて次の2つの手法があります。

  • 土地区画整理手法
  • 市街地再開発手法

「土地区画整理事業」では、土地区画整理法に基づき道路や公園など土地を区画を平面的に整理するのに対し、「市街地再開発事業」では、都市再開発法に基づき建物の高層化を行うことで土地を立体的に整理するイメージです。

街並みを整える「土地区画整理」手法

土地区画整理の手法は、おもに以下のような目的で街並みを整えるときに用いられます。

  • 土地利用の合理化:土地の有効利用を促進し、都市機能の強化や住環境の改善を図る
  • 交通網の整備:道路や公共交通機関の整備を行い、渋滞の緩和や交通の円滑化を図る
  • 防災対策の強化:地震や洪水などの自然災害への対策を行い、地域の安全性を確保する
  • 環境保全:緑地や公園の整備・水資源の保全など、環境に配慮した土地利用を行う
  • 公共施設の整備:学校や病院などの公共施設を充実させ、地域の福祉増進に寄与する

戦後から現在にかけて、都市計画がないまま住宅や商業施設などが建てられ郊外へと広がっていく「スプロール現象」の見られる地域では、道路や排水施設の不備による支障や、非効率な公共施設の配置など、多くの問題点が残っています。

既存の土地区画を仕切り直し、より住みやすく安全で便利な街にするためには、現在その区画に住んでいる人や店舗の持ち主に、土地の一部を提供(減歩)してもらわなくてはなりません。

その後、自治体は提供された土地を道路や公園などの公共用地に充てたり、提供された土地の一部(保留地)を売却して、家屋の移転補償や整備工事などの事業資金に換え、区画を整えていきます。

区画整理が終われば、居住者にはもとの土地の代わりに別の土地(換地)が割り当てられます。

▼土地区画整理事業についてさらに詳しい解説はこちらの記事もお読みください
土地区画整理事業とは何か – 弁護士が再開発エリアの立ち退き料を増額!

市街地の再開発でもっとも多い「市街地再開発」手法

市街地で行われる代表的な再開発が「市街地再開発事業」です。

市街地再開発事業は、市街地の土地建物を高層化し立体的に活用(高度利用)して利便性を図り、都市としての機能を高めることを目的に、建築物や敷地の整備と公共施設の整備を行う事業です。都市再開発法に基づいて行われます。

具体的には、老朽化した低層の建物が密集している地区などについて、敷地を統合して建物を取り壊し、高層ビル群を建築するような事業です。新しく建築した高層ビルの周囲には、あわせて公園や広場、街路などの公共施設や防災施設も整備されます。

事業費はおもに「保留床の処分」つまり高層ビルなどが増えたために生まれたスペース(保留床)を新しく企業や個人に売却することと、補助金等でまかないます。

首都圏での代表例としては以下のようなものが知られています。

  • 狭い集合住宅群を整備した代官山地区の再開発
  • 六本木ヒルズを建築した六本木六丁目地区の再開発
  • トリトンスクエアを建築した晴海一丁目地区の再開発

市街地再開発はさらに第一種と第二種に分けられ、第一種が多くの割合を占めています。

この次で詳しく説明しますが、市街地再開発事業のうち、第一種と第二種では以下のような点が異なります。

第一種市街地再開発第二種市街地再開発
対象地域の要件・高度利用地区、都市再生特別地区または地区計画、防災街区整備地区計画もしくは沿道地区計画の区域内であること
・耐火建築物の割合が建築面積で全体の概ね1/3以下、又は耐火建築物の敷地面積の割合が宅地面積の概ね1/3以下であること
・土地の利用状況が著しく不健全であること
・土地の高度利用を図ることが都市機能の更新に資すること
左に加え、
・0.5ha以上であること
・災害発生のおそれが多いか、又は緊急の施行を要する地区であること
施工者・個人施行者
・市街地再開発組合
・再開発会社
・地方公共団体
・都市再生機構
・道路公団
・地方住宅供給公社 など
左のうち、個人施行者と市街地再開発組合は含まない
建物・土地の権利調整方式権利変換方式管理処分方式(用地買収方式)

なかでも対象地域に住む人や店舗・物件を持つ人に大きく関わってくるのが、建物・土地の権利調整方式です。

第一種では「権利変換方式」がとられます。もともとの住民や店舗オーナーは、再開発後の建物に入居する(権利床を受け取る)ことができます。

第二種はいったんすべての土地や建物を買い取って(または収用して)行うもので、緊急性の高い事業などに限定して行われます。

自宅やお店などが再開発対象になり、立ち退きしなくてはいけない…というケースでは、ほとんどは第一種市街地再開発事業に該当すると考えておきましょう。

第一種市街地再開発のポイントは「権利変換」

第一種市街地再開発では、対象のエリアにもともと住んでいた人や店舗・物件を持っていた人に、その土地建物を明け渡してもらい、その代わりに再開発によって建てられた高層ビルなどの一部を所有できるようにします。

このシステムを「権利変換」といい、このときに取得する床を「権利床」といいます。

第一種市街地再開発事業は、大まかに見ると、以下の流れで進みます。

  1.  高度利用地区等の都市計画決定
  2.  第一種市街地再開発事業の都市計画決定
  3.  第一種市街地再開発事業の施行認可など
  4.  ★地区外転出の申出
  5.  ★権利変換計画の決定
  6.  ★権利変換期日
  7.  ★土地の明渡しなど
  8.  建築物等の工事の着手
  9.  工事の完了
  10.  清算・保留床の処分

このうち、再開発地区で不動産の権利を所有している方(住民や店舗オーナー)に大きく関係するのが★マークの付いた手続きです。

それぞれ期限や所定の手続きが決められているので、以下にポイントを解説していきます。

★地区外転出の申出

権利変換(再開発後のビルなどへの入居)を希望せず、地区外へ引っ越そうと決めた場合は、施工者に対し「地区外転出の申出」を行います。

権利変換の代わりに

  • 金銭の給付を受ける
  • 自己所有建物の移転をする

ことになり、この時に給付される金銭を一般に「立退料」といいます。

立退料は、この後に解説する権利変換期日までに支払われることとなっています。

地区外転出の申出は、市街地再開発事業の施行の認可等の公告がなされた日から起算して30日以内に行うこととなっており、短期間でかなり大きな決断をしなくてはならないので注意が必要です。

★権利変換計画、権利変換期日

権利変換計画は、施行地区内に従前からある権利を、再開発後にどのような権利へ変換するかを定めるものです。

計画決定後、不動産の権利者に対する通知をもって権利変換処分が実施され、計画に定められた権利変換期日に権利変換がなされます。

★土地の明渡し

施行者は権利変換期日が過ぎると、明渡し期限を定めて明渡し請求をしてきます。

この期限までは家や店舗を明け渡さなくても構いません。また、もし期限が過ぎても立退料が支払われないような場合は明け渡す必要はありません

明渡し期限が過ぎているだけでなく、立退料も支払われているのになお明け渡さない場合、施行者の請求を受けて都道府県知事が明渡しの代執行を行います。施行者自身が、明渡し請求をしてくるケースもあります。

この土地の明渡しの局面は、施行者と再開発を拒む者との間で、紛争となりやすい局面です。

★権利変換計画に対する不服申立て

施行地区内の権利者が権利変換計画の内容に不満がある場合、意見書を提出することができます。

この意見書が採択されなかった場合は、その不満の中身が従前の権利の価格に関するものである限り、収用委員会に対して、裁決の申請をすることができます。

さらに、この収用委員会の採決にも不服がある場合は、裁判所に訴えを提起することができます。

▼第一種市街地再開発事業についてさらに詳しい解説はこちらの記事もお読みください
第一種市街地再開発事業とは何か – 弁護士が再開発エリアの立ち退き料を増額!

公共性や緊急性の高いケースに限られる「第二種市街地再開発」

一方、第二種市街地再開発は、たとえば倒壊のおそれがある建物を早急に取り壊すなど、緊急かつ公共性の高い事業をスムーズに進めるために行われます。

第一種市街地再開発事業でとられている権利変換方式は、事業規模が大きくなってくると個々の権利調整に時間がかかり、なかなか再開発が進まないというデメリットがあります。

そのため、公共性と緊急性が著しく高い事業に限っては、土地収用法に基づき施行者が地区内の建物・土地等を一旦すべて買収または収用する「全面買収方式」を取れるようになっています。

完成した施設建築物の管理・処分を行うための手続きを「管理処分手続」といいます。

「収用」とは、特定の公共事業のために、正当な補償のもと、権利者の意思に関わりなく土地等の所有権をはじめその他の権利を移転又は消滅させることをいい、第二種市街地再開発では「立ち退きたくない」と主張しても認められないことになります。

ただ、実際の第二種市街地再開発事業にあたっては、収用には至らずにほとんど任意買収で済んでいることも覚えておきましょう。

任意買収では、第一種市街地再開発と同様に、移転や引越などに必要な金銭「立退料」を受け取ります。

▼第二種市街地再開発事業についてさらに詳しい解説はこちらの記事もお読みください
第二種市街地再開発事業とは何か – 弁護士が再開発エリアの立ち退き料を増額!

再開発について「?」があったらまず弁護士に相談を

もし自宅や店舗のエリアで再開発の話が出たら、さまざまな疑問が浮かんでくることでしょう。

  • 実際に再開発が施行される場合、わが家はどうなってしまうのか?
  • 再開発の担当者が訪ねてきたらどう対応すればよいか?
  • 立退料はいくら受け取れるのか?

といった疑問は、どれも法律の知識があればベストな対応を取ることができます。

少しでも疑問やお悩みがあれば、まずは法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。

特に再開発は専門性が高く、取り扱った経験のある弁護士は限られている分野のため、再開発について注力している弁護士にご相談されることをお勧めします。

リード法律事務所では、再開発についてのさまざまな疑問について、経験豊富な弁護士が無料で相談を受け付けています。お気軽にご連絡ください。

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